一般社団法人 日本コンプライアンス&ガバナンス研究所
JAPAN COMPLIANCE & GOVERNANCE INSTITUTE(JACGI)

代表理事・会長 水尾 順一
駿河台大学名誉教授・博士(経営学)


近年、CSR(企業の社会的責任)、SDGs(持続可能な開発⽬標)、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資など企業を取り巻く環境が変化しています。企業に対する新しい価値観が台頭し、企業評価の物差しが変わりつつあるからです。

そもそも企業は、社会や消費者にモノやサービスを提供する存在です。そのため、企業が提供するモノやサービスの中⾝が、消費者にとってなにより重要なことは⾔うまでもありません。しかし最近では、それだけでは消費者が満⾜しなくなってきているのではないでしょうか。企業の環境活動や地域社会への貢献度、また不祥事の予防活動などが企業経営全体に影響を与えることから、消費者がそのことに⽬を向けるようになってきているからです。

しかし、残念なことに、コーポレート・ブランドをゆさぶる企業不祥事が後を絶ちません。ひとたび不祥事を起こせば、その企業のブランド価値は⼀瞬にして崩壊してしまうだけではありません。企業の存続にまで重⼤な影響を及ぼすことは、これまでの不祥事を起こした企業の事例からも明らかです。いま企業に求められているコーポレート・ブランドの底辺には、ステークホルダーといわれる消費者や取引先、地域社会、さらには従業員との関係など、企業経営全般にわたって法令を遵守するという姿勢が必要なことは申すまでもありません。

この問題は、コンプライアンス及びガバナンスの問題にも関連しています。コンプライアンス及びガバナンスとは、第一義的には「会社に不祥事を起こさせないで、どのように良好に、しかも効率的に統治していくか、すなわち会社を治めていくか」ということです。その上に立ち、働く従業員の喜び(売り手よし)やお客さまの喜び(買い手よし)、そして、地域社会や環境への配慮など(世間よし)の活動に取り組むことが求められます。

このように、コンプライアンスとガバナンスを広義にとらえて、世のため、人のため、そして社会から喜ばれる存在であることによって、株主の満足さらには会社の持続可能な発展(サスティナビリティ)も可能になるのだと考えます。日本に古くからある「三方よし」を意識した「ステークホルダー資本主義」が、いまこそ重要な時代になっているということができます。

このような背景のもと、⽇本コンプライアンス&ガバナンス研究所(JACGI)は、コンプライアンス及びガバナンスに関する国内外の情報収集、調査・研究、コンサルティング、普及・啓発などの活動を通じて、社会経済の健全かつ持続的な発展に貢献してまいります。



水尾 順一 略歴
(株)資生堂を経て1999年駿河台大学へ奉職、経済経営学部教授、経済研究所長等を歴任後2018年退職、現在に至る。消費者庁「内部通報制度に関する認証制度検討会」座長(2017~2018年)。2006~08年東京工業大学大学院特任教授、2010年ロンドン大学客員研究員。日本経営倫理学会常任理事、(一社)経営倫理実践研究センター首席研究員、NPO法人経営倫理士協会理事、消費者庁 新未来ビジョン・フォーラム フェロー
。著書に『サスティナブル・カンパニー』(宣伝会議)などがある。